中干しの季節
7月、稲が波打つ風景
5月下旬に田植えを終わらせて、そこから1ヶ月以上経過して、7月に入りました。稲は膝より少し低いくらいの高さまで成長して、濃い緑色が田んぼを覆っている。6月の上旬までは、稲が小さくて田んぼの水面が見えて、そこに風景が写り込んでいた。今はもう稲が大きくて水面が見えない。代わりに、大きく育った稲が風になびいて波打っている姿が美しい。順調に育った稲の葉が、波打つたびに光りを反射する。山の谷間の小さな私の田んぼでは、物語に登場する地平線に向かって果てしなく続くような壮大な風景にはならない。田んぼを挟み込むふたつの山の木々の揺れにあわせて、私の田んぼの稲が波打つ。田んぼが山の一部であり、その田んぼて稲を育てる私も、また一部になっていると感じる。だから作業が終わってもすぐに帰らずに、しばらく田んぼを眺めて過ごしてしまう。
中干しのタイミングと意味
さて、稲が大きくなった6月下旬に田んぼの水を抜きます。天候の影響で期間がかわりますが、私の田んぼは3週間ほど水を抜いたまま乾かして、その後にまた水を入れます。この6月下旬頃に水を抜いて田んぼを乾かす作業は、中干しと呼ばれます。稲作に必須の作業では無いので、やらない地域もあるそうです。人伝で聞いただけなので、自信はありませんが、やらなくても大丈夫な場合もあるはず。私の田んぼは中干し必須です。 山の陰が当たる時間帯がある私の田んぼは乾きにくい。中干しであらかじめ乾かしておかないと、稲刈りのときに田んぼが柔らかくて、コンバインが走りにくい。私は、コンバインを持っていなくて、持っている方に稲刈りを委託している。稲作を父から引き継いですぐの年に、田んぼが柔らかすぎて、稲刈りを断られそうになったことがある。こんなことがあったので、今では長めに中干しをして田んぼを少しでも固くなるように乾かしている。
倒伏対策としての中干し
田んぼが柔らかくて困ることはもう一つある。稲が倒れやすくなる。8月になれば穂が出てきて、稲の上部が重くなる。稲の根が踏ん張って重くなった穂を支えるのだが、その時に根の周りが泥濘んで柔らかい土では、根が踏ん張らなくて稲が倒れてしまう。稲刈り直前で倒れた場合なら、十分に穂が大きくなって米になっているから、刈り取れば良い。しかし、まだ穂が十分に育っていないのに倒れたら、もう穂が大きくならない。小さすぎて食べられないクズ米と呼ばれる米になってしまう。穂が出てくる前に田んぼを乾かして固める中干しはとても大切な作業です。
溝切機を導入する
今年は溝切機を購入しました。田んぼに溝を掘って水が排水口に向かって流れやすくさせる。溝で凹凸がついた田んぼは日光に当たる面積が増えて乾きやすくなる。昨年は雨が多くて田んぼが乾かなくて、倒れてしまった稲があった。その対策に、今年は溝切機を導入する。始めて使う農機具を上手く使えるか不安。だが、もっと上手にお米を作れるようになるかもしれない高揚感が上回る。子どもの頃に自転車を買ってもらったときの嬉しさに近いかもしれない。上手く出来なかったとしても、反省して対策して来年もっと上手くやれば良い。今はこの嬉しさに従って、溝切機を使うだけ。